スマホの充電を目的に来店するお客様
これはだいぶ以前に、小さな個人店で責任者をしていた頃の話になります。それは、怒りというよりも驚きに満ちた出来事でした。
1人の高齢女性が来店し、すぐにこう言いました。「昨日来たものだけど、携帯の充電させてもらえるかしら?」
僕は驚いて少し観察したところ、どうやら洋服を見に来店をされたのではなく、ただ携帯を充電するためにお店にやってきたように感じました。
当然ですが丁重にお断りしました。アパレルのお店で、どうぞ充電してください、という店はありません。
ところがこの女性はこう言いました。「他のお店はさせてくれるわよ、そのくらいいいじゃないの!」と怒っています。
僕は驚きましたが、「では、コンビニや携帯ショップにでも行かれてお願いされたらどうですか?」と。そうすると女性は「コンビニはさせてくれないでしょ」引き下がりません。
この人はなんて自分勝手なんだろう、、。私はゲンナリしました。まぁ、よほど困った事情があって充電させて欲しいのかも知れないし、少しならいいか、と。
私は「今回だけ少しならいいですよ、本来なら困るので今回だけにしてくださいね」と言いました。
お客様のお願いをできるだけ聞こうと頑張りますが、本来なら受けてはいけなかったと後で思い知りました。
お客様のスマホを充電する店側のリスク
本来、こういったお願いは困るのです。スマホの充電は電気代が掛かりますし、当然、事業としてサービス外です。
掛かる電気代は会社の経費です。光熱費も事業の運営上、計算した上で使用していますので、外部の人間に経費を自由に使わせることはできません。
また、一度、お客様のスマホの充電を受けると、お客様はこのお店は充電させてくれると判断して次回も依頼されるでしょう。
それに、携帯を預かっている間に盗難や破損があったら誰が責任を取るのですか?そういったお店側のリスクを考えると受けないことは間違いではありません。
さらに、接客をするスタッフの時間。スマホの充電目的にいらした女性に対応する時間は人的な費用、コストです。無料ではないのです。
販売員の優しさが仇にある対応の一例
おもむろに携帯と充電器を取り出して準備を始めた矢先、この女性はボソッと言いました。「いいなら、最初からいいって言ったらいいじゃないの、まったく」と。
それを聞いて、個人的な感情ですが、この人は感謝の気持ちが無いんだとガッカリしました。もう一度、考え直しました。やはりリスクを考慮する必要があります。
この人は、これまでも当店のお客様ではないし、お客様として利用していただく方ではない。やや強めに言ってよいケースと判断しよう。そして、お帰りいただこう、と。
私は「あなたはお願いする立場なのに何を言っているのか。こちらはあなたの個人的なお願いに聞いてあげようとしたが、その言い方は無いのではないか?」と言いました。
女性は「だから最初から、いいですよ、と言えばいいだろう」と言い返してきます。
私は「ですから、一度、お断りしましたが、あなたがとても嫌そうな顔をされて困っているようだったので、今回だけならいいですよ。と言いました。当たり前のように利用されては困ります。お帰りいただけますか。」と言いました。
女性はしぶしぶお帰りになりました。
理不尽な要望に対する正解とは
本来はこういったやり取りはするべきではありません。私の判断力と経験の乏しさが招いたことです。
しかしながら、アパレル販売員の頃は周りのスタッフや上司と確認しながら物事に対応します。会社を盾に対応すると一部の人を除いて、お客様は強く出ても無駄と感じて引き下がるのが一般的です。
個人店の場合は、人によりますが、お客様もお店の足元を見るのかもしれません。会社としてのルールが無く、また売場に一人のケースが多く、その場で自分の責任で物事を対処するケースが発生します。
しかしながら、責任者である私の認識が甘いため、お店作りで進んでおらず、上手く対処できていないとも言えます。
但し、こういった出来事が様々な違う場面での対処方法に役立てられます。スタッフが1人で落ち着いて対処が出来て、かつ、お客様も嫌な思いをせずに納得していただく。
誰でもお客様でも、至らない部分はあります。この件のみでは、この女性をお客様ではないと判断するのは早々です。些細な過ちと言えると思います。ですから、今回の対応は正しくはないです。
時として毅然とした態度は必要ですが、接客業ですし、よほどのケースでなければ、お客様に嫌な想いをさせたくはありません。
笑顔でお帰りいただくためのルール作り
スタッフとの共有は事後報告になります。これを機に、スマホの充電は店内の商品をお買い上げいただいた方へのサービスとして行っています、という内容にしようかなと考えています。
そんなの毅然と断わればいいでしょ。いやいや、そのくらい受けてあげればいいでしょ。それぞれの考え方はあるでしょう。あなたが同じ立場なら、咄嗟にどのような判断を下しますか?
長年、接客業に携わる身としては、こういったケースも喧嘩別れではなく、お客様の笑顔を導き出してこそプロの販売員だと思います。
会社として、お店として、お客様に納得していただく説明と会話を考える必要があります。
2023年6月24日 ファッション専門!オークション代行&ブランド買取 アントロワ